東急電鉄の車内化粧マナーCMの炎上問題
「みっともない」かどうかは浅い思考
前回の東急電鉄のマナー広告でわかるのが、考える能力、思考の深さでしょう。
今回はビジネスとしての効果という視点とは違って、なぜ大衆はみな同じ発想になってしまうのか? 深く考えることができる人は何をやっているのか?の話にしましょう。
「マナー違反」、「みっともない」とコメントをいただきましたが、本質的に問題はそこではないのでどーでもいいです。※それぞれの意見は、すべてが正解です。
逆に、「最優先の問題なのか?」、「なぜ自分で行動しないんですか?」などの質問をしても、回答は1つもありませんでした。とても残念です。
そこで思ったのが、まさに目の前の現象しか考えることができなくなっているのでは?という器具です。 意見は言うけど根拠がない、話が続かない。 コミュニケーションの問題かもしれませんが、実はちょっとした工夫で思考は深くなります。
思考の深さとは
一言でいえば、表面的でなく構造的なことを把握して考えること。抽象化して考えられるかどうか。 とてもわかりやすかったのがこちらからの受け売りです。「深く、速く、考える。 「本質」を瞬時に見抜く思考の技術」【アマゾンはこちら】
この中に、抽象化の能力をチェックするアナロジー思考のテストとして紹介されているクイズがあります。※なかみ検索で見られます。
アナロジーをwiki先生で検索すると、類推(るいすい)だそーです。
類推(るいすい)は類比(るいひ)、アナロジー(Analogy)ともいい、特定の事物に基づく情報を、他の特定の事物へ、それらの間の何らかの類似に基づいて適用する認知過程である。古代ギリシャ語で「比例」を意味する ?ναλογία アナロギアーに由来する。
せっかくなので元の論文を見ながら、アナロジー思考のチェックをしてみましょう。
Gick&Holyoak(1980)は、アナロジーによる問題解決について実験的に検討した最初の研究である。この研究は、放射線問題と要塞問題といった洞察問題の解決を扱い、アナロジーという現象を実験室で研究する道を開いたものである。放射線問題というのは、Duncker(1945)で用いられていた問題である。それは、次のような問題である。
元の論文です アナロジー過程における認知コンポーネント
その問題がこちらです。
あなたは医者で、胃に悪性腫瘍がある患者を扱っていると仮定しよう。
腫瘍を破壊しないと患者は死んでしまうが、手術も不可能である。腫瘍を破壊できる強い放射線は存在するが、腫瘍とともに健康な組織までも破壊してしまう。
弱くすれば健康な組織を傷めないかわりに、腫瘍も破壊できない。
正常な組織を傷つけずに腫瘍を破壊するにはどうしたらよいだろうか。
さぁ、よく考えてみてくださいね。
次に、2問目にいきます。
ある国の中心に位置する要塞を攻略したいと考えている将軍が困っています。
将軍は、要塞を陥落させるために、どうしてもその要塞に全軍を送りたいのだが、たくさんの道が車輪のスポークのように放射線状に出ていて、それぞれの道には地雷が敷設してあります。
小隊ならば安全に通過できても大隊が通ろうとすると地雷が爆発してしまいます。
全軍で一気に攻めるためにはどうしたらよいでしょうか?
こちらもの回答もわかりましたか?
ちなみに1問目の方が難しいんですって。
さて、あなたが抽象度を上げて深い思考ができるかどうかの答え合わせをしましょう。
1問目の答え。 弱いレーザーを異なる角度から当てる
2問目の答え。 放射線状の道に分散して地雷が爆発しない人数で攻める
どうでしょうか、正解しましたか?
元の論文でわかりますが、実はこのクイズの本当の目的は、【1問目と2問目が同じ問題だと気づくかどうか?】 が本当の研究目的だったんですね。
具体的に考えれば、医療と戦争の話。 ところが抽象度を上げると、どちらもある一点に対して、【多方面から同時に攻撃する。】ということなんですね。
なぜこれがクイズ、論文として調査されるかというと、普通の人はどちらも違う話だと思うからです。
表面的なことにまどわされずに抽象度の高い思考、アナロジー思考ができるかどうか? それが浅い思考と深い思考の違いなのです。
「みっともない」で終わらずに深く考える
「車内での化粧はみっともないか?」と聞かれれば、普通の人は「みっともない」と答えるでしょう。
たとえばワイドショー。「スッキリ」ではまさに、そのまんまのアンケートで87%が「みっともない」と回答したそうです。
電車内マナーについてのアンケート調査が、28日放送の日本テレビ系情報番組『スッキリ!!』(毎週月?金8:00?10:25)で行われ、視聴者アンケートで87%が「電車内の化粧は”みっともない”」と回答した。
普通の人が普通に聞かれたら普通に「マナー違反!」と答えるわけですね。 ワイドショーとしてはもっともパイの大きい大衆の意見ゾーンを狙うので、こういう質問の仕方で大正解!という成功例でもあります。
ほらやっぱり、「みっともない」、「マナー違反」! というのが浅い思考のお手本ですね。 なぜなら、どっちでもいい回答だからです。
よくわからないですか? 税金は安いほうがいい? と聞かれれば、「安いほうがいい」と答えるでしょう? お金はほしい? なら「ほしい」。 と同じようなものだからです。
ちなみにあるアンケートでは、、「パートナー、配偶者は肥満(BMI数値25未満の肥満でない人)ではないほうがいい?」と質問すると、77%が肥満でないほうがいい。 そりゃそうだろう。 でも肥満でもいい=6%ほどいましたけどね。 http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000040.000003149.html
だったら、16.5%の化粧が「みっともない」なら、77%の肥満は、どれだけ責められるのか・・・ 他人のことはほっておいてほしいのですが。。。
化粧マナーのランキング
そして、もう1つ重大なことは、優先順位。 車内での化粧は「みっともない」が、運賃から広告費を使ってマナーを啓蒙し減らすべきは、「車内で化粧」が最優先なのか? ということです。
残念ながら「お客さまが迷惑と感じる行為ランキング」では、残念ながら8位、16.5%しかありません。 平成27(2015)年度駅と電車内の迷惑行為ランキング発表 1位は7年連続「騒々しい会話・はしゃぎまわり等」
だったら今、動画に選抜された4つのトップが「車内での化粧」である根拠はなんなのか? たとえばここ数か月でポケモンGOで歩きスマホが増えた。 去年のランキングにはでないけど、トラブルも発生している。 ホームで電車に接触すれば人身事故になる。 などの根拠があれば優先順位が高いのも十分な理由でしょう。
このように、意見の裏付けや言葉の根拠があるなら、どんな意見でも価値はあります。
考えるのをやめて「マナー違反!」とだけ言ってるほうが「みっともない」ってことに気づけるかどうかなんですね。 ※みっともなくない!と言ってるだけも同じ
でもマスコミについてる広告代理店は優秀なので、「みっともない!」、「マナー違反!」とさわがせてナンボ。さすがプロです。 でもあなたは人を非難するマーケティングに釣られなくていい、ということです。
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